日銀が政策金利を1.25%へ引き上げ――住宅ローンと新内閣の物価高対策はどうなる?
日本銀行は2026年9月18日、政策金利を1.00%程度から1.25%程度へ引き上げました。家計にとっては、変動型住宅ローンなどの負担が増える一方、預金金利の上昇や円安・輸入物価の抑制が期待されます。
前日に発足した第2次高市改造内閣は物価高対策を最優先課題に掲げています。今後の焦点は、政府が財政支出で需要を支えながら、日銀が利上げで物価を抑えるという政策の組み合わせを整合させられるかです。
- 日銀は政策金利を0.25ポイント引き上げ、1.25%程度とした
- 住宅ローン利用者や借入金の多い中小企業には負担増となる
- 預金者には利息増、円高方向に働けば輸入物価の抑制が期待できる
- 新内閣の積極財政は、対象と期間を絞らなければ利上げ効果を弱める可能性がある
9月18日に何が決まったのか
日本銀行の公表資料によると、9月17日と18日に開かれた金融政策決定会合で、無担保コールレート翌日物を1.25%程度で推移させる方針が決まりました。従来の1.00%程度から0.25ポイントの引き上げです。
政策金利は、銀行同士が短期資金をやり取りする際の基準です。変更後すぐに、すべての預金金利や貸出金利が同じ幅だけ動くわけではありません。ただし、銀行の資金調達コストを通じて、住宅ローン、企業融資、預金などへ段階的に波及します。
今回の決定で影響を受ける主な主体は次の通りです。
- 変動型住宅ローンの利用者:基準金利や返済額が見直される可能性がある
- 中小企業や設備投資を予定する企業:新規借入や借り換えの負担が重くなる
- 預金を多く持つ世帯:普通預金や定期預金の利息増が期待できる
- 輸入品を購入する消費者や企業:利上げが円安の修正につながれば、輸入価格の上昇圧力が和らぐ
家計への影響は「借入」と「預金」で分かれる
利上げの影響は一様ではありません。住宅ローンを抱える現役世代と、金融資産を多く保有する世帯では受け止め方が異なります。
変動型住宅ローンは契約条件を確認する
仮に住宅ローン残高が3,000万円あり、適用金利が0.25ポイント上昇した場合、単純計算による利息負担の増加幅は年7万5,000円です。実際の増加額は、残存期間、返済方式、金利優遇、元本の減り方によって変わります。
銀行によっては、毎月返済額を一定期間据え置く仕組みを設けています。しかし、その場合も利息の割合が増え、元本の返済が遅くなることがあります。「すぐ返済額が変わらないから影響がない」とは限りません。
確認したいのは次の3点です。
- 次回の適用金利見直し日
- 毎月返済額の変更時期と上限
- 固定金利へ変更する場合の手数料と総返済額
預金金利の上昇はプラスだが、物価との比較が必要
預金金利が上がれば、家計の受取利息は増えます。ただし、預金金利が物価上昇率を下回る状態では、預金の実質的な購買力は減り続けます。
利息の額だけでなく、食料、エネルギー、家賃などを含む生活費の伸びと比較する必要があります。高齢世帯にも恩恵はありますが、保有資産の少ない世帯には効果が限られます。
ここがポイント: 利上げは家計全体に同じ効果を与えません。借入残高、預金額、年齢、住居形態によって負担と恩恵が分かれるため、平均値だけでは政策の妥当性を判断できません。
新内閣の物価高対策と利上げは両立するのか
第2次高市改造内閣は9月17日に発足しました。政府は同日の基本方針で、「責任ある積極財政」を掲げ、物価高への対応を最優先課題としました。
基本方針には、危機管理投資、成長投資、飲食料品の消費税率の臨時的な引き下げ、就業者負担軽減支援金を含む税・社会保障改革が盛り込まれています。
ここで問われるのは、政府と日銀の目的ではなく手段の組み合わせです。
- 日銀は金利を上げ、借入と需要の過熱を抑えて物価を安定させる
- 政府は減税、給付、投資によって家計や企業の需要を支える
- 財政支出が広すぎれば需要を押し上げ、物価抑制に必要な利上げ幅が大きくなる可能性がある
- 供給力を高める投資なら、生産能力や物流を改善し、中長期的な物価安定にもつながり得る
したがって、積極財政そのものを一括して評価するのは適切ではありません。一時的な生活支援と、生産性を高める投資を分け、事業ごとに財源と終了時期を示すことが重要です。
財政にも金利上昇の負担が及ぶ
利上げは民間だけでなく、国の財政にも影響します。国債が満期を迎えて借り換えられる際、新しい市場金利が利払い費へ反映されるからです。
財務省の令和8年度一般会計予算では、一般会計総額は約122.3兆円、国債費は約31.3兆円です。国債費は前年度当初予算から約3.1兆円増え、歳出全体の約4分の1を占めています。
金利上昇が直ちに既発国債の全額へ及ぶわけではありません。それでも借り換えが進むにつれて負担は増え、社会保障、防衛、教育、インフラ更新などに使える予算を圧迫します。
新内閣が掲げる「成長によって債務残高対GDP比を下げる」という方針には、少なくとも次の条件が必要です。
- 投資先が民間投資や賃上げを継続的に生み出すこと
- 名目GDPの伸びが債務の増加を上回ること
- 補助金や減税に期限と効果検証を設けること
- 金利上昇による国債費の増加を予算に織り込むこと
成長率が期待通りに上がらなければ、債務と利払い費だけが残ります。「積極的」であることより、支出の中身と撤退基準が問われます。
利上げには反対論もある
追加利上げへの主な懸念は、景気や賃上げを冷やすことです。とりわけ、価格転嫁が難しく、借入依存度の高い中小企業には負担が集中します。
一方、金利を低く保ち続ける場合にも代償があります。円安が進めば、原油、天然ガス、食料、原材料などの輸入価格が上がり、家計と企業の双方を圧迫しかねません。海外との金利差が広がれば、円安圧力が長引く可能性もあります。
政策判断の軸は「利上げか据え置きか」という二択だけではありません。
- 賃金上昇が物価上昇を持続的に上回っているか
- サービス価格の上昇が一時的か、広範に定着しているか
- 円相場の変動が輸入価格へどの程度波及しているか
- 中小企業の倒産、設備投資、雇用に急変がないか
日銀には物価の安定が求められ、政府には利上げの痛みが集中する層への対応が求められます。ただし、支援を全国一律の恒久給付にすると、財政負担と需要刺激が膨らみます。住宅困窮世帯や資金繰りが厳しい事業者など、対象を絞る設計が現実的です。
今後の注目点
今回の1.25%が到達点とは限りません。次の政策判断を読むうえでは、総裁会見の説明に加え、今後公表される会合の「主な意見」や議事要旨を確認する必要があります。
特に見るべき点は次の4つです。
- 追加利上げの条件として、日銀が賃金と基調的な物価をどう評価するか
- 金融機関が住宅ローン金利と預金金利をいつ、どの程度変更するか
- 新内閣が物価高対策の対象、期間、財源をどう具体化するか
- 令和9年度予算編成で、金利上昇後の国債費をどう見積もるか
まとめ
事実として確認できるのは、日銀が政策金利を1.25%程度へ引き上げ、家計、企業、国の資金調達環境が一段と変わったことです。
今回の利上げは、預金者には利息増、借り手には負担増をもたらします。円安の修正を通じて輸入物価を抑える効果は期待できますが、為替は海外金利や国際情勢にも左右されるため、利上げだけで決まるものではありません。
生活者がまず行うべきことは、住宅ローンの見直し日と返済条件を確認することです。政治に対しては、物価高対策の規模だけでなく、誰を対象に、いつ終了し、金利上昇下でも財源を維持できるのかを問い続ける必要があります。
