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行政システムは「乗り換えられる契約」へ――11月4日公表の調達改革論議と暮らしへの影響

行政システムの調達資料を確認する職員とサーバー設備のイメージ。

行政システムは「乗り換えられる契約」へ――11月4日公表の調達改革論議と暮らしへの影響

行政システムの費用を抑え、手続きを改善するには、契約時の安さに加え、必要なときに別の事業者へ移れる条件を確保することが重要だ。デジタル庁が2026年11月4日に公表した検討会の議事概要では、そのための契約や評価のあり方が議論された。

ただし、新制度の決定ではない。問われているのは、政府がシステムを買った後も、費用と品質を自ら判断できるかという実務だ。

  • 今回の動き:10月21日開催の情報システム調達改革検討会について、11月4日に議事概要が公表された。
  • 中心の論点:事業者を変更できる条件と、運用・保守まで含めた費用の評価。
  • 暮らしとの接点:行政手続きの改善やサービスの継続に、契約の設計が関わる。
  • 海外の比較材料:欧州委員会は、クラウドの自律性を実際の調達で評価している。
目次

11月4日に何が明らかになったのか

公表されたのは、デジタル庁の「令和8年度情報システム調達改革検討会」第2回の議事概要だ。会合そのものは10月21日に開かれており、開催日と公表日を分けて読む必要がある。

委員意見では、入札に参加する企業の数だけでなく、契約後に別の事業者へ移れるかを確かめる考え方が示された。長期の継続契約による利点も含め、システムを使い終えるまでの費用で評価する論議である。デジタル庁の議事概要

この段階で、行政システムの契約が一斉に変わるわけではない。改革案を具体的な発注条件に落とし込めるかが、次の課題になる。

「乗り換えられる」ことが、なぜ重要なのか

契約更新時に他社と比較できても、実際に引き継げなければ交渉の余地は小さい。現在の事業者だけが仕組みを理解している状態では、価格や改修内容に不満があっても変更が難しくなる。

例えば、別の事業者へ引き継ぐ場面を考えると、少なくとも次の確認が要る。

  • 保存しているデータを、引継ぎ先が利用できる形で取り出せるか。
  • システムの設計や、他のサービスとの接続方法が分かるか。
  • 日々の運用と障害対応を、誰が引き継ぐのか。
  • 移行に必要な期間と費用を、契約前に見積もれるか。

これらは、政府調達を評価する際の具体的な確認軸になる。契約終了が近づいてから調べるより、発注時に条件を決めておく方が、選択肢を残しやすい。

ここがポイント: 事業者を頻繁に替えることを目標にする必要はない。継続する場合にも、別の選択肢と比べて判断できる契約が重要だ。

家計への効果は、給付よりも行政の使いやすさに表れる

今回の公表で、税金や窓口の料金が直ちに下がるわけではない。住民への効果を測るなら、システム費の削減額だけでなく、手続きにかかる時間やサービスの安定性を見るべきだ。

例えばオンライン申請を改修する場合、入力の重複を減らせたか、途中で諦める人が減ったか、職員の確認作業が短くなったか。こうした変化まで測れば、支出が住民の利益につながったかを判断しやすい。

財政面でも、初年度の開発費だけでは足りない。運用、修正、セキュリティ対策、将来の移行にかかる費用を合わせて比較する必要がある。

安く導入できても、使い続ける費用が膨らめば節約にはならない。一方、将来の選択肢を増やすための準備にも費用がかかる。改革を評価する側は、削減額と追加負担の両方を示すべきである。

欧州は、クラウドの自律性を購入条件に組み込んだ

海外の比較材料になるのが、欧州委員会の公共調達だ。

欧州委員会は2026年6月1日の説明で、同年4月にEU機関向けのクラウド調達を4事業者に授与したと公表した。調達では「Cloud Sovereignty Framework」を用い、法的な管轄、データ、運用、供給網、技術、安全性などを48の基準で評価している。欧州委員会の説明

これは11月4日の新たな海外決定ではない。ただ、日本の調達改革を考えるうえで、「自律性」という政策目標を購入時の評価に変えた先行事例になる。

日本で応用するなら、国益との接点は行政サービスを自ら維持できるかにある。契約先との関係が変わったとき、データを回収し、代替の運用へ移れるか。その条件を確かめることは、価格交渉にも業務継続にも役立つ。

もっとも、欧州の基準をそのまま採用すればよいわけではない。国内で利用できるサービス、人材、移行費用を踏まえ、実行できる条件にする必要がある。

継続契約にも合理性はある

長く担当した事業者には、業務の理解や障害対応の経験が蓄積する。交代すれば、引継ぎ費用が発生し、安定稼働を損なう可能性もある。

そのため、すべてのシステムに同じ移行要件を課す方法には無理がある。更新を続ける利益と、選択肢を失う不利益を比較するべきだ。

政策判断の軸は、次の三つに絞れる。

  • 止められない業務か:停止した場合に、住民や事業者が受ける不利益はどの程度か。
  • 引き継げる市場があるか:必要な技術と体制を持つ代替事業者が存在するか。
  • 備える費用は妥当か:移行準備への支出が、将来の費用抑制や継続性に見合うか。

競争を増やすための準備で調達費が過度に上がれば、財政上の利益は薄れる。反対に、当面の安さだけで出口を閉ざせば、将来の政府が選べなくなる。この両方を避ける設計が必要だ。

次は、仕様書と契約に何が書かれるか

今回確認できるのは、調達改革をめぐる委員意見の公表までだ。住民サービスの改善や支出削減が実現したとの成果報告ではない。

今後は、理念の説明から一歩進んだ次の点を見たい。

  • 新しい発注案件で、データや運用の引継ぎ条件が具体化されるか。
  • 導入費だけでなく、保守と移行を含む費用が比較されるか。
  • 手続き時間や安定稼働など、利用者が受ける効果を測るか。
  • 継続契約を選んだ場合も、その判断理由を説明できるか。

政府が同じ会社を使い続けること自体では、改革の成否は決まらない。次の契約更新で、費用と品質を比較し、必要なら変更できる。その条件が仕様書に書き込まれるかが、最初の確認点になる。

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